地球の重力ハンパない

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地球の重力ハンパない

根無し草の雑記ブログ

~根無し草の雑記ブログ~

嫌いだった人が死んだ

8年間働いた前の職場で一人だけどうしても苦手な人がいた。



当時プロデューサーとして働いていた私は、スタジオやデザイナーと掛け合う毎日で、忙しいながらも自分の采配で仕事を進められることに心地よさを感じていた。



担当するプロジェクトによってアサインされるデザイナーも変わり、デザインが微妙な人もいれば、ものすごい速さでこちらの希望のデザインを納品してくれる人、共同作業でお互い意見を出し合いながら作業を進める人と様々だった。



あるプロジェクトで初めてタグを組むことになったデザイナーにジェシカという女性がいた。



30代半ばで髪をいつも赤く染めた色白小顔の美人だった。



強いひとだった。



自分のデザインに圧倒的な自信を持ち、実際彼女のデザインはかっこよかった。



駆け出しだった私の意見はもちろんのこと、他のプロデューサーの意見よりも、自分の感性を信じて押し進めようとする人だった。



いつも誰かと衝突していた。



私は弱いから、強い人に飲まれてしまう。私は強い彼女が苦手だった。



彼女と初めてタグを組んだプロジェクトが終わったあと、20代だった私の頭には白髪が何本も生えていた。



ある時、大雨で会社の一階が水浸しになったことがあった。



二階の吹き抜けから一階を見下ろすと、ジェシカが率先して掃除を手伝っていた。



悔しかった。



嫌な奴でいてくれたら楽に嫌いになれたのに、彼女は人情深かった。



子供好きでもあった。



笑顔が素敵でもあった。



少しして彼女は会社を辞めた。



私は彼女の友達でもなかったのでどこに行ったかは知らない。人づてに聞いたのかもしれないが、覚えていない。



その数年後、私も会社を辞めて日本に帰国した。



ある日何気なくFacebookを眺めていると、タイムラインに元同僚が投稿した写真が目についた。ジェシカが笑っている写真だった。











その投稿で初めてジェシカが一年前に亡くなっていたことを知った。










死因は脳腫瘍。



あんなに強かった彼女が脳をやられて衰弱していったであろう姿は想像したくなかった。



彼女のことは苦手だった。彼女の強さが辛くて、嫌いになった時期もあった。



それと同時に彼女に憧れてもいた。どんな時も自分と自分の才能を信じて人に向かっていく彼女の強さが羨ましかった。



いつか、私が死んでもあの世で彼女に会いたいとは思わない。彼女とは友達ではなかったから。



それでももし会ってしまうのならば、その時は彼女の強さに負けないくらいの強さを持った自分でありたいなと思う。


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